都内から辻堂に移って2年半になるのですが、その間に友人や同僚や、たまに初対面の人からも、同じ質問を何度も受けてきました。条件や数字で答えられる質問と、住んでみた実感でしか答えられない質問を、10個ずつ集めています。
私は都内のIT企業で働く40代の会社員で、妻もフルタイム、ふたりとも週0〜3日の出社で、娘は4歳です。2年半前に家族3人で湘南の7エリアを半年ほど見て回って、いまは辻堂で戸建てに住んでいます。移ってから40代でサーフィンも始めました。
この記事は、そのよく聞かれる質問を20個、聞かれた順にというより、移住を考える人が気にする順に並べて答えたものです。1問ずつ短く答えているので、気になるところだけ拾い読みしてください。エリアの比較や数字を詳しく知りたい方は、別の記事(湘南7エリア比較)に出典つきでまとめてあるので、そちらのほうが役に立つと思います。数字はすべて2026年8〜9月時点のものです。
決める前に知りたいこと

Q1. 湘南ってどこからどこまでですか
これは本当によく聞かれますし、実は答えが決まっていません。行政的には神奈川県が「湘南地域」という区分を持っていますし、地名としては大磯や平塚まで含む人もいれば、鎌倉から先は湘南ではないという人もいます。
移住先として見るなら、私は市町村ではなく駅を中心にした生活圏で、西から茅ヶ崎・辻堂・藤沢・大船・鎌倉・逗子・葉山の7つに分けて考えるのがいちばん実用的だと思っています。辻堂を藤沢市から分けているのは相場も生活の導線も独立しているからで、大船を入れているのは海がない代わりに通勤がいちばん強い、という別の性格を持っているからです。この線引きの理由と、県の行政区分や湘南ナンバーの範囲がどうなっているかは、湘南ってどこからどこまで?という記事に出典つきでまとめています。
Q2. 都内まで実際どのくらいかかりますか
辻堂から品川まで41分、東京駅まで49分というのが日中の所要時間で、朝の通勤時間帯はこれに数分から10分ほど足した感じです(2026年9月ダイヤ、JR東日本の時刻表で確認)。私の場合、出社日は辻堂から東京駅まで1時間近くで、家と職場までの分がこれに乗ります。
正直に言うと、出社日はしんどいです。出社日はグリーン車を使っていて、辻堂から東京駅までSuicaで1,000円、座って仕事をしながら行けるので、往復2,000円を出社の日数ぶん払っている、というのが我が家の通勤コストの実態です。夫婦ともに週0〜3日の出社だから払えている金額で、毎日出社なら考え方が変わると思います。なお辻堂には特急「湘南」が朝7時台に1本も停まらないのですが(6時台2本・8時台2本、茅ヶ崎と藤沢は6〜9時で10本)、特急料金は同じ区間で事前購入920円とグリーン車とほぼ同額なので、私は使ったことがありません。7エリアの所要時間と始発の有無は、比較記事に表でまとめています。
Q3. 共働きで移住して成立しますか
我が家は成立していますが、条件つきです。夫婦ともに週0〜3日の出社という働き方で、これが毎日出社だったら、たぶん辻堂を選んでいませんし、湘南自体を候補にしていなかったかもしれません。
成立するかどうかを分けるのは、通勤時間そのものより、出社の頻度と、保育園に入れるかどうかの2つだと思っています。前者は会社の制度の話なので自分で決められませんが、後者は調べ方で失敗を減らせます。あとは片方が出社の日にもう片方が送り迎えをする、という分担が回るかどうかで、これは移る前に一度、カレンダーに書き出してみるのをすすめます。
Q4. どのエリアがいいですか。何で決めましたか
「どこがいいか」は家族の条件で答えが変わるので、ひとつには絞れません。我が家の条件は、私の通勤が破綻しないこと、妻の実家まで車で行けること、海と街と保育園と駅が1つの生活圏に収まっていること、の3つでしたが、正直に言うとこの条件だけでは大船を除いてどこも候補に残ります。絞ったのは条件ではなくて、実際に7エリアを歩いて回った印象と、そこで出会った家のほうでした。
最後に迷ったのはエリアというより家で、葉山と鵠沼と辻堂の3軒でした。葉山は気に入ったあとで保育園を調べて諦め、鵠沼は価格が届かず、残った辻堂の家が全部及第点を超えていた、という順番です。この過程は7エリア比較の記事の後半に、それぞれのエリアを歩いて感じたことと一緒に書いてあるので、そちらを読んでいただくのがいちばん早いです。ひとつだけ言えるのは、7エリアは「海の近さ」と「通勤のしやすさ」がだいたい逆相関していて、どちらを削るかを先に決めると候補が半分になる、ということです。
Q5. 物件価格や家賃は都内とどう違いますか
都内との差を数字で言うのは難しくて、都内のどこと比べるかで全部変わってしまうので、ここでは書きません。それより移住を考える人に知っておいてほしいのは、湘南の中での差のほうが大きい、ということです。
中古戸建ての坪単価で見ると、茅ヶ崎136万円、辻堂187万円、藤沢158万円、逗子136万円と、同じ「湘南」でも隣り合う茅ヶ崎と辻堂で1.4倍近く違います(ウチノカチが国土交通省の取引価格データを集計したもの、2022年9月〜2026年3月の平均)。辻堂は藤沢市の一部だと思って予算を組むと読み違えます。7エリアの相場と、同じエリアの中でも駅まち・海側・住宅街で相場が変わるという話は、比較記事にまとめました。
Q6. 車は必要ですか
エリアで答えが変わります。辻堂・藤沢・大船は駅前で生活が完結するので車がなくても暮らせますし、逆に葉山は鉄道駅がなく、バスも多くの路線で30分に1本ほどで、車がないと現実的ではありません。鎌倉は車があっても道が狭くて使いにくい、という別の難しさがあります。
我が家は車を持っていなくて、妻の実家に行くときはレンタカーを借りています。辻堂で暮らしていて実感するのは、坂がないので自転車が本当に楽で、娘を乗せて保育園にもスーパーにも行けることです。葉山の高台や鎌倉の谷戸を見たあとだと、この差はかなり大きいです。
Q7. 保育園には入れますか
入れましたが、「辻堂なら大丈夫」とは言えません。藤沢市は園の数が多いのですが、数が多いことは入れることを意味しなくて、実際に藤沢市の保留児童数は440人と7エリアでいちばん多いです(神奈川県の集計、2026年4月1日現在)。
我が家が入れたのは、購入の時期にたまたま近隣の園に空きが出たことと、購入してから転入のタイミングを見計らって住民票を移す時期をずらしたこと、の2つが重なったからで、前者は運です。移住を考えている方に言えるのは、待機児童数ではなく保留児童数を見ること、物件を気に入る前に園を調べることの2つです。私はこの順番を葉山で間違えました。
Q8. 津波や災害は怖くないですか
怖くないとは言いませんし、安全ですとも危険ですとも書けません。書けるのは、どの地図を見たかだけです。
藤沢市の津波ハザードマップは令和2年度に作られたもので、神奈川県が2015年3月に公表した浸水想定をもとに、相模トラフや元禄関東地震など5つの地震シナリオを重ねています。最大の津波高はシナリオによって8.6〜11.5m、到達時間は最短で6分とされています(藤沢市公式、津波避難ビルの情報は2026年3月に更新)。あわせて国土交通省の「重ねるハザードマップ」で、津波と洪水と土砂災害を同じ地図で見られます。
我が家は物件を見に行く前の段階で、候補にしていた市や町のハザードマップをひととおり見ていて、浸水想定があまりに深くかかっているところは、その時点で候補から外しました。ただ全部を機械的に切ったわけでもなくて、鎌倉の材木座のあたりは色がついているのを分かったうえで、それを度外視して見に行っています。海のそばに住みたくて来ているので、地図の色と自分の気持ちのどちらを取るかは、最後は家族の判断になると思います。浸水想定は想定する地震と津波の高さとセットでしか意味を持たないので、色だけ見て判断しないでください。7エリアの地図の見方は、津波ハザードマップの記事に書きました。
Q9. いつから準備しましたか。何をしましたか
検討を始めてから入居まで、だいたい12ヶ月でした。最初の半年は休日に家族3人で7エリアを歩いて回っていて、エリアを絞ってから物件を見に行くようになり、家を探し始めて3ヶ月目くらいに葉山で気持ちが決まりかけた家に出会って、それを保育園で諦めて、辻堂で決めました。
購入してから引っ越すまでにも時間を置いていて、これは保育園の空き状況を見て転入の時期をずらしたからです。やったことを順番に書き出すと長くなるので、これは別の記事にまとめる予定です。
Q10. 賃貸で試したほうがいいですか。いきなり買いましたか
いきなり買いました。いちばん大きいのは年齢で、40代でこれから住宅ローンを組むとなると、賃貸で1〜2年試してから買う、という回り道をする時間の余裕が人生設計のうえでありませんでした。それに娘がよく動く子なので、家の中で気兼ねなく動き回れる戸建てにしたかったですし、毎月払うお金を家賃ではなく自分の資産に向けたかった、というのもあります。
賃貸で試すこと自体は、いい方法だと思います。ただ、夏の湘南と冬の湘南は別の街ですし、1年住まないと分からないことは多いので、試すなら1年、と最初から決めておいたほうがいいです。その1年で子どもが1つ大きくなるので、そこをどう見るかは家族次第だと思います。
住んでみてどうか

Q11. 実際どうですか。後悔していませんか
後悔はしていませんし、住んでみて不満もありません。スーパーが近くて海が近くて、坂がなくて、保育園と駅が一直線に並んでいて、選んだ理由がそのまま暮らしになっています。
ただ、割り切ったところもあります。辻堂は坪単価が7エリアの中では高いほうですし、座って通勤するには片道1,000円のグリーン車を使うことになって、これは出社の回数がそのまま効いてきますし、駅前の商業集積は藤沢や大船には及びません。この3つを納得できるかどうかは、辻堂を選ぶ前に考えておいたほうがいいと思います。
Q12. 毎日海に行くんですか
夏は、波と潮と風の状況がよければ毎朝行っています(雨でも行きますが、雷だけは入れません)。朝4時に起きて海に入って、7時前に戻って妻子の弁当を作って、娘を保育園に送って、10時から仕事という日課です。冬は日の出が遅いので、平日は弁当のいらない日に限って入っています。
海に行く、というのはサーフィンのことで、移住して半年後に40代で完全未経験から始めました。スクールに通っているわけではなく、YouTubeやネットで知識を入れて自己流でやっているので上達は速くありません。最初はロングボードから始めて、少しずつ板を短くしてきて、2年経ったいまはミッドレングスで横に滑れるくらいです(パキパキのショートボードはまだ先です)。初めて自分のためだけにやっていることなので、続いています。妻と娘は海には入りませんが、朝の海岸の散歩や休日の海沿いのカフェには一緒に行っています。
Q13. 夏は混むんじゃないですか
混みますが、混むのは海に車で来る人の側で、住んでいる側はそれほどでもありません。国道134号は海水浴シーズンの週末に渋滞しますが、辻堂の街の中心は駅のまわりにあって、134号は街のいちばん海側を走っているので、通勤で使う人以外は日常でほとんど通らない道なんですよね。我が家は車を持っていませんし、サーフィンも自転車で行ける距離なので、渋滞の中にいる側になったことがほとんどありません。
数字で言うと、国土交通省関東地方整備局がまとめている神奈川県の主要渋滞箇所(一般道)の一覧で国道134号として載っているのは鎌倉側と大磯側の区間で、茅ヶ崎・藤沢の区間は入っていません。ただ夏の海水浴シーズンの混み具合そのものを示す公的な数字は見つけられなかったので、そこは印象の話だと思ってください。海に向かう道や駅前が人で増えるのは事実ですが、私は朝4時に海に出ているので、混み始める時間にはもう家に戻っています。夏の湘南の話は、朝の時間の使い方も含めて別の記事にする予定です。
Q14. 塩害は本当にありますか。洗濯物はどうしていますか
あります。いちばん分かりやすかったのは自転車で、移住してすぐサーフィン用に買った自転車は1年で錆びてしまって、チェーンまわりが錆びすぎて、パーツを交換して直すより買い直したほうがコスパがいい、という判断になりました。洗濯物は外に干していません。基本は乾燥機で済ませていて、これは塩害というより砂と湿気の対策でもあります。
海からの距離と風向きで程度はかなり変わるので、同じ辻堂でも海側と駅側では話が違うと思います。塩害と砂と湿気については、2年住んで分かったことを別の記事にまとめる予定です。
Q15. 知り合いがいないのに寂しくないですか
知人ゼロで移ってきましたし、自分から知り合いを作りに行くような性格でもないのですが、寂しいと思う暇がありませんでした。生活を一から作り直すだけで忙しくて、保育園、スーパー、海までの道と、「自分の街」が少しずつ増えていく感覚が楽しかったです。
ご近所づきあいは、むしろ増えました。前に住んでいた都内のマンションでは隣の人と挨拶を交わすようなことはあまりなかったのですが、いまは隣近所と普通に挨拶をしますし、送り迎えやサーフショップや犬の散歩の人とも顔見知りになっていくので、無理に作らなくても2年経つと自然に増えています。さびしかったことを挙げるなら、飲み会が減ったことくらいです。
Q16. 買い物に困りませんか
困りません。辻堂は駅直結のテラスモール湘南に専門店が約280店舗あって、日常の買い物はここと近所のスーパーで完結します。それに通販が思っていたより普通に早くて、Amazonはプライムだと翌日、早ければ当日に届くので、都内にいた頃と体感はほとんど変わりません。
Q17. 子どもは変わりましたか
変わりました。娘はもともと知らない大人にも話しかける性格なのですが、都内ではそれが素通りや苦笑いで終わることが多かったのが、辻堂ではパン屋でも、送迎で会う高齢の方でも、サーフショップでも、犬の散歩の人でも、ちゃんと返事が返ってきます。それで娘は前より遠慮なく人に話しかけるようになりました。
Q18. 仕事の効率は落ちませんか
出社日はしんどいです。これは隠しようがなくて、辻堂から東京駅まで1時間近く、往復すると2時間が通勤に消えます。
一方でリモートの日の集中は、都内にいた頃より明らかに上がりました。窓の外の音が車から風と鳥に変わるだけで頭が静かになる、というのは移る前には想像していなかったことです。昼休みに海まで行って戻ってくる、というのもリモートの日にはやっていて、これは都内では考えられなかった時間の使い方です。通勤時間は伸びましたが、労働時間あたりの出力は上がっているので、合計では勝っていると思っています。あと夫婦の会話が増えました。通勤で職場と家を切り離していた分が、朝の海の散歩や休日の海沿いのカフェでの会話に置き換わった感じです。
Q19. 都内に戻りたくなりませんか
いまのところ、なりません。ただ都心が嫌いになって出たわけではなくて、都心は都心でよかったです。妻の実家が近くて保育園のお迎えを頼めたことも、いま思えば大きな恩恵でした。
戻りたくなった瞬間というのも、2年半のあいだで思い当たりません。理由をひとつ挙げるなら、朝の海から戻った日は、波の高さも空の色も妻の機嫌も娘の変化も、いつもより深く見えることで、これは都内では手に入らなかったものです。
Q20. これから移住する人に、一番言いたいことは何ですか
条件や数字で絞れるのは入口までで、最後に決めるのは実際に歩いた印象と、そこで出会った家だった、というのが我が家の実感です。なので半年くらいは休日に家族で湘南エリアを歩く時間を取って、その街で買い物と通勤と送り迎えをする自分を想像してみてください。
そのうえで、気に入った家が出てきたら、契約の前に保育園の保留児童数とハザードマップを見てください。我が家はこの順番を一度間違えて、葉山の家を諦めています。それから、どの街にも割り切る点はあります。辻堂の場合は坪単価と、座って通勤するためのグリーン車代と、藤沢や大船ほどではない駅前の商業集積で、そこは選ぶ前に考えておいてよかったと思っています。
この記事のデータについて
- 所要時間・当駅始発・特急「湘南」:JR東日本公式の駅時刻表(2026年9月ダイヤ・平日)。所要時間は日中の値で、駅探の検索値を時刻表で確認したもの
- グリーン料金・特急料金:JR東日本「普通列車グリーン車 料金」 https://www.jreast.co.jp/railway/train/green/charge/ (Suicaグリーン料金 100kmまで1,000円)/JR東日本「在来線特急のご案内」 https://www.jreast.co.jp/ltd_exp/guide/ (100km以下 事前料金920円)/東京〜辻堂の営業キロ54.8kmは駅探 https://ekitan.com/transit/fare/sf-2590/st-2559 (いずれも2026年9月4日閲覧)
- 戸建て相場:ウチノカチ(utinokati.com)による国土交通省「不動産情報ライブラリ」取引価格データの集計(2026年9月閲覧/分析期間2022年9月〜2026年3月の全期間平均)
- 保育園:神奈川県「保育所等利用申込・入所待機状況」令和8年4月1日現在
- 津波:藤沢市「津波ハザードマップ(令和2年度作成)」 https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bousai/bosai/bosai/hazardmap/tsunami/h25hazardmap.html /藤沢市「津波」 https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bosai/bosai/hazardmap/tsunami/index.html /国土交通省「ハザードマップポータルサイト(重ねるハザードマップ)」 https://disaportal.gsi.go.jp/ (いずれも2026年9月4日閲覧)
- 葉山町のバス:葉山町地域公共交通計画(2025年3月)
- 国道134号の渋滞:国土交通省関東地方整備局「神奈川県 地域の主要渋滞箇所(一般道)」 https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000071907.pdf (134号の掲載区間は鎌倉市・大磯町。作成年の記載なし。2026年9月4日閲覧)/参考:神奈川県「令和3年度道路交通センサス」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n5h/cnt/f704/douro_koutsuujyousei.html (秋季調査のため夏のピークは含まない)
- テラスモール湘南の店舗数:住商アーバン開発「テラスモール湘南」施設ページ(専門店約280店舗・JR辻堂駅直結) https://sumisho-ud.com/facilities/27/ (2026年9月4日閲覧)
制度も相場もダイヤも変わります。検討される際は、必ず各自治体・事業者の最新情報をご確認ください。

